![]() ![]() ![]() 罠を張る。 Sun.25.9.2011
言いたかないけど、思いっきり丸見えですよ琥珀さん・・・ たんぽぽは寝ている時間が長いけれど、めざましい食欲もあり、毛皮も少しずつ復活してきた。エリザベスカラーが気になるのか動作が大きくなっていて、すごい勢いでいきなり振り向いたりもする。ぽっぽちゃん、衝撃で小柄な君の娘がなぎ倒されてるよ。 他の猫たちを追いかけてしまうので、夜は大人猫たちをゆっくり休ませてあげるために、家に来た仔猫の時分からずっと寝室で就寝していた琥珀。でもたんぽぽは布団の中にもぐりこんで寝ているので上から踏んだりしたら危ないし・・・とここ数日は居間のゲージの中で寝かしつけていた。けれど今日、そろそろ寝ようか・・・と就寝準備をしていると、しっぽを極めてぴんと立てた琥珀が小走りに駆け寄ってきて、きりりとした顔でわたしを無言で見上げ、そばから離れない。わかりましたよ、今日は琥珀も寝室で寝ようね。そして、琥珀には頭を抱きしめられ、たんぽぽには足を抱きしめられて就寝。暑い・・・その夜、奇声を上げてまな板の上を走りまわるオクラの悪夢を見たのだった。
* 夕食 * ![]() 療養中。 Sat.24.9.2011
夜の間放っておくのも心配だったので、たんぽぽと一緒に就寝した昨夜。痛いからか、しょっちゅう移動するたんぽぽが気になってほぼ徹夜になってしまった。そしてようやくうとうとした朝方、なにかを感じてはっと目覚めると目の前には至近距離でじーっと見つめるたんぽぽの顔と、ほっぺたに容赦なくぎゅむーっと押し付けられるエリザベスカラーが。・・・おはようたんぽぽ。あの、痛いのですが。 日中はブランケットにくるまって居間で眠っているたんぽぽだが、好奇心に満ち満ちた黒白猫以外は、たんぽぽに添い寝しようとはしない。そして、寝ているたんぽぽを離れたところから眺めてはわたしの横に飛んで帰り、まんまるになった目で見上げて「あの、あれはわたしの長年添い遂げた妻だと思うのですが・・・フォルムがなんか違うんです・・・」と訴えかけてくる牡丹。やっぱり切った箇所が大きいからその分多めに毛皮がなくなっちゃったのが、猫視覚的には問題なのかしら・・・ ねむりネズミ並に眠りたいひとのわたしは、夜にはゾンビーのように動作がスローかつ無表情に。というわけで今日は夕食を食べずに就寝。 * 夕食 * ![]() 退院。 Fri.23.9.2011
手術の後、切除部位がかかりつけの先生が予想していたサイズを越えて相当大きいので入院は1週間、もしなにもかも奇跡のように上手く進んだとしても最短で土曜日と言われていたたんぽぽの退院。それが、回復が予想以上に早いということで急遽今日午前の退院となった。 ただそうは言っても、大手術だったのには違いなく、茶箪笥に飛び上がったりするのはもちろん、それどころか急に動いたり、走ったりと身体に負荷をかける行動はすべて厳禁とのこと。でもうちにはゲージがないことをお伝えしたところ、動物病院の先生が貸し出してくださった。なにもかもありがとうございます・・・!しかし、組み立てて、昨日支度した猫布団を中に入れてみたものの、そこに入れられたたんぽぽはパニックに。うん、せっかくうちに帰ったのに普段入ったことのないゲージに閉じ込められたら、そうなっちゃう気持ちもわかるんだけど。動物園の熊のようにぐるぐるさせておくのも身体に負担を掛けるよね・・・というわけで、ブランケットにくるんだたんぽぽに寄り添いつつ、作品を製作する。一緒に座っていると彼女の体温がじんわり伝わってきて、ほっとする。おかえり、たんぽぽ。
* 夕食 * ![]() ICO。 Thu.22.9.2011
午前中、たんぽぽが過ごしやすいように細々と居間の模様替え。普段寝ている茶箪笥の上に飛び乗るのはどう考えてもしばらく止めた方がいいから、テーブルの下に敷くように第二の猫布団も用意したんだけど・・・もしかして、厚すぎて肝心のたんぽぽが入る余地がない?ちょっと経てば綿が凹んで厚みが減りそうなんだけどなー
台風で到着が遅れていた PS3 版の「ICO」 が来てくれたので、夕食後どきどきとプレイ。PS2 版をやった頃より大きな画面のテレビになったこともあって、グラフィックの綺麗さに感動。そして自分のプレイの下手さに絶望。3つめのソファーに辿り着くまでに、4回は重力に負け、1回は世界が終わって、5回も「コンティニューしますか?」と訊かれる羽目に。ごめんね少年・・・すべてはこの、高所恐怖症が喚起されるに違いないほどたいそうリアルな「高いところでふらふらしてる感」がいけないのよ、と言い訳してみる。それにしても、Myst シリーズの URU もそうだけれど、わたしはこういう、誰もいない綺麗で大きな世界を1人で(ICO は2人でだけど)ふらふらする感覚が大好きなんだなあ。プレイそっちのけで、はるか眼下に広がる海を眺めたり、聳え立つ城壁を見上げたり、あちらこちらの景色を眺めて時を過ごしてしまう。わたしが主人公だったら、少女を連れ出す甲斐性も運動神経も体力もなく、おまけに方向音痴っぷりを遺憾なく発揮して、お城の中でうろうろするだけで終わってしまいそうな気がしてならない。
* 夕食 * ![]() 安堵。 Wed.21.9.2011
昨日は、おかあさん猫のたんぽぽの手術の日だった。難しい手術だったので、1日中祈りながら過ごしたけれど、夜に無事成功の連絡を頂き、ここ数日この手術のことで心がいっぱいになっていたわたしは、安堵の吐息と共にくらげのように脱力した。よかった・・・本当によかった・・・ かかりつけの先生が、「たとえて言うならばブラックジャックのような」とおもむろに説明なさった、動物の手術のスペシャリストの先生がいつもの動物病院まで来て手術してくださったのだった。この先生には尿道結石の時に牡丹もお世話になっている。もし連絡のタイミングが少しずれていたら、ブラックジャック先生は海外に手術に行かれていたそうで、そうなれば次に手術して頂けるのは1ヶ月後。それに台風が来る日が1日早くなっていたら、やっぱり手術は延期になっていたかもしれないし、本当にいろんな力に助けてもらった。どうもありがとうございます・・・!頑張ってくれたたんぽぽも、ほんとにありがとう。退院までの間に、たんぽぽ用のお布団を作って、みんなと一緒に待っているからね。 そして、緊張から開放されたわたしは、しばらく綿人形のようにぼうっとした後、なぜかその反動で居間の壁にぺたぺたと漆喰を塗り始めたのだった。夜だったのに。残っていた漆喰がそれほど多くなかったので、居間の壁の一部の面だけを塗り終えて一旦終了となったけれど、我ながら不思議な反応。でも朝になると白い漆喰の壁は光を柔らかく反射して、居間を明るく照らしてくれたのだった。
台風直撃ですごい風の音を聞きつつ、ごはんの支度。出汁を取ろうとかつおぶしの入ったキャニスターを開けると、たんぽぽはいつもすごい勢いで飛んできて高らかに鳴くのだけど、今日は聞こえないのがさみしいなー
* 夕食 * ![]() さんま! Sat.17.9.2011 昨日の風景。せっかくだからと茶箪笥の後ろの障子を貼り直したり、茶箪笥の中のグラスや酒器を全部出して磨いたり。そしてふと気がつくとこんなことになっていましたよ。
夕暮れ、お友達から立派なさんまがたくさん届いた!うわあ!いつもありがとうございます!今夜はうきうきとさんま尽くしで。おいしい〜 グルメで、興味があるのはおいしい魚のみ、それも普段は白身のお魚にしか寄ってこないちーちゃんが、わたしのそばから離れないのを見て納得する。
* 夕食 * ![]() フランネル。 Fri.16.9.2011 昼間は夏と見まごうほどの暑さながら、朝晩の秋の気配は確実に濃くなっている今日この頃。これまでの麻のカバーのひんやりと冷たい手触りが気になって、暖かな肌触りの白のフランネルで猫用の布団のカバーを縫った。干しておいた布団を取り込んで、廊下でカバーをつけていたらさっそく猫たちが集合。いや、みんな、この布団、茶箪笥の上に移動するから・・・あ、ちょっとむーちゃん本気で寝ないで・・・
* 夕食 * ![]() 踊るハロウィン・ゴースト。 Thu.15.9.2011
あまりの暑さに空気に陽炎のごとく溶けていきそうな今日この頃。いったん涼しくなって安心させてから気温再上昇とかなんなのですか9月よ。このまま暑さが続いて、その後すぐに冬とかになりませんようにと祈りつつ、クレープを焼く。 クレープの残りの生地を焼いて冷凍しようと、次々にフライパンに流していた最後の1枚、中途半端に残った生地が暑さのせいか(いやちがう)、盆踊りのように踊るゴースト型に仕上がった。驚きのあまり、お茶を2杯飲む間、じっくりとその生態を観察する。うーむ、髪の毛が3本立っている・・・
「トム」と、かすかに、はるか遠くで、彼女がいった。「南の島ではね、人間はめいめい、友だちのみんなと握手して、お別れをいい、帆をあげて去っていく時だとわかる日が一生のうちにはあってね、またじっさいそうだし、それが当然なの ― とにかくその日がその人に定まった時なのね。今日がそれなんだよ。わたしもときどきおまえにそっくりでね、土曜のマチネーをずっと座りっぱなしで観つづけたりしたら、とうとう夜の九時になって、家の者はおまえのパパに迎えにいってもらわなきゃならない。いいかいトム、まえにみた同じカウボーイたちが、同じ山の頂きで、同じインディアンどもを撃ちはじめたら、そのときは座席の椅子をたたんで、ドアにむかい、思いのこしたり、通路をまた戻っていったりしないのが一番いいんだよ。だから、わたしはまだ幸福で、また愉快な気持ちでいるあいだに出ていこうとおもうの」 (『たんぽぽのお酒』レイ・ブラッドベリ 北山克彦訳) 季節が巡るごとに読みたくなる本がある。ソルジェニーツィンの 『イワン・デニーソヴィチの一日』 は冬だし、アニータ・ブルックナーの 『秋のホテル』 は晩秋。この 『たんぽぽのお酒』 は断然夏の終わりだ。夏草の甘い香り。子供たちが声をあげて駆けまわる祝祭のような1日。蜜蜂の羽音の中の甘くけだるいまどろみ。オレンジに染まる夕暮れに長く伸びる影。夜の闇に潜む恐ろしいなにか。そして夜の片隅で響く優しく静かな声。この本の中で語られるいくつもの物語の中で、わたしはおおおばちゃんの旅立ちの場面が好きだ。この優しく暖かで力強い場面は、9月という季節にわたしが送ってきたひとたちのことをぬくもりと共に思い出させてくれる。最後に、1人心地良く「温かい雪だまりのようなリンネルやウール、シーツやカバー」の中に居心地よく身を沈めたおおおばちゃんは小声で言う。「この世のほかのすべてのことと同じように、これはふさわしいことなのよ」と。
* 夕食 * ![]() 1年。 Wed.14.9.2011
家族の一周忌が終わった。あっという間の1年間だったなあとぼんやりする。
写真は、お友達の娘さんたちに焼いたかぼちゃマフィンとココアマフィン。もうじきハロウィンだから・・・とハロウィン仕様の型を買おうかなーとも思ったが、魔女の指の形をしたケーキ型とか、目玉型のゼリー型とか、蜘蛛型のクッキーカッターとか、あまりにも本気なハロウィン仕様に、幼子にトラウマを植えつけてどうする・・・!と我に返って、マイルドな葉っぱ&かぼちゃ型で焼く。ココアパウダーじゃなくて、ダークココアパウダーを使って黒く仕上げたのが唯一のハロウィン的こだわり。 そこでミサを行って下山し、前にいた所[ラヴァント]へ戻った。真っ黒に煤けた一軒の農家で、村人の貧しさのままにきわめて貧弱な、これまでのものとは似ても似つかぬ食事をとった。食事がまだ半ばにしてワインが切れてしまったとき、聖職者ミヒャエルさまは当を得た祈りを主に捧げ、鉄の徳利をひとつ祝福した。それからその徳利を取ると、何回も空になっていたはずなのにワインがなみなみと一同に注がれたのである。ミヒャエルさまは一同に同情なさったことも確かだが、多分にご自分自身のためでもあったのだ。かれは徒歩でこの行程を歩き、ひどく喉が渇いておられたからである。ともかくこのオーストリア人の[神の]僕を通して、この渇いたる者たちに十分なワインを得しめ給うた不滅の神には感謝をしたのである。(1485年10月10日) ねえ、何気なく書いてるけど、これってすごいことなんじゃないの・・・?というわけでパオロ・サントニーノ『中世東アルプス旅日記』を再読。イスラム教徒であるトルコ軍に破壊された教会を聖別するために総大司教が派遣された。その随員の1人である書記による1485年、1486年、そして1487年にかけてのこの旅日記は、愛読書の1つ。訪れた城での宴の様子や人々の風俗の描写、それに「奇跡の力で」軽い白ワインを赤の重いワインに変えたりするくだりなど、何度読んでも面白くて仕方がない。
* 夕食 * ![]() 琥珀といういきもの。 Thu.8.9.2011
真のマイペースというものが何かということについて、君から学んだ気がするよ、琥珀。 人のために料理するのは、ケイにとって自分の気持ちをあらわす手段です。パスタはそんな彼女のお気に入りの、元気のでる食べ物です。オリーブオイル(ケイが使うのはエクストラヴァージン)、甘みの強いヴィデーリアのたまねぎのソテー、おろしたてのパルミジャーノ・レジャーノを入れたこのシンプルでおいしいパスタは、自分や愛する人たちを元気づけてくれるとケイは信じています。グリルした肉や魚のつけあわせにぴったりですし、チーズをたっぷりかけて前菜にすることもできます。(オリーブオイル、パルメザン、たまねぎのリングイーネ)) パトリシア・コーンウェル 『パトリシア・コーンウェルの食卓』 再読。検屍官シリーズは読まないのに、この本はわたしの愛読書となっている。料理と食器、カトラリーと小物の組み合わせとか、盛りつけ方とか、写真の1枚1枚も魅力的だし、写っているガルニチュールも、子牛の胸肉、ほうれんそうのピストゥーづめにはミニキャロットとレッドポテトとか、イチジクとプロシウットのつめもの入りポークロインとにはフレッシュのいちじくとか、それぞれ納得出来る構成だ。さて今回読み返したのは作りたい料理があったからなんだけど・・・うーん、これだけの材料が揃うかな?そしてこの本には、あまりにも度々「ヴィデーリアのスィートオニオン」が出てくるので、食べたくて仕方がなくなってしまう。いつか食べる機会がありますように。
* 夕食 * ![]() シナモンティ。 Wed.7.9.2011
光の傾き方や風の香り、遠く聴こえるかすかな蝉の声。この頃、ふとしたことが1年前の時間と重なって、いろんなことを思い出す。ただただ夢中で、駆け抜けてしまえばあっという間だった日々。家族の一周忌まであと少し。あの日の圧倒的な夕焼け空は、今も鮮やかに記憶に残っている。 たゞ自分の心の欲するまゝ、銀の皿にヨカナーンの首をと申しあげましたまでのこと。たしかにあなたはお誓ひになりました、エロド王。お忘れになつてはなりませぬ、たしかにお誓ひになりました。 (七つのヴェイルの踊りを踊り終えた、サロメのことば) ワイルド 『サロメ』 再読。岩波文庫のこの1冊はビアズレーの挿画もぴったりで好もしい。読みながら、数年前のギュスターヴ・モロー展で見た 『出現』 を思い出す。あの静かに張り詰めた空気。あの絵は、浮き上がるヨハネの首に驚愕する罪深き女を描いたものではなく、その首の射るようなまなざしにもたじろがず、怖じず、女そのものの力で深く受け止め、拮抗したエネルギーのせめぎあいの中で一歩も引くことなく優雅にそこに立つサロメの姿としてわたしの目には映った。その時の diary に書いた言葉が、『サロメ』を読み終えた今もう1度蘇る。「その力と輝きの前にすべてのものは霞のように遠ざかり、はるか彼方の溶け込むような影となる。」
* 夕食 * ![]() 球根。 Tue.6.9.2011
毎秋の騒ぎだけれど、ああっ球根!と気づいて大慌てで注文する。真夏には影も形もないくせに、秋が始まるとさっと姿を現し、なのに潮時を逃すとあっという間に姿を消してしまう秋植え球根。これまで何度、冬の寒空の下で球根を懸命に探したことか。特にヒヤシンスの水栽培は、庭に花のない早春の貴重な楽しみなので逃すわけにはいかない。それにクロッカスの可憐さも捨てがたいし、スノードロップの清楚さも、それを言うならお気に入りのムスカリLady Blue も・・・と購入リストがたちまち長くなり、熟慮の上いくつか消して、でもまた増えてといういたちごっこを繰り返してからようやく注文する。来年の春はもうこれで大丈夫、なはず。 祖父の朝食の定番は、カリカリに焼いたベーコンを添えた目玉焼きとトーストだった。表面をカリカリに焼くのはトーストも同じ。焼き方にはうるさくて、毎朝、厨房の入り口の近くにあった業務用トースターの横に立って、焼き具合を見ていた。日本郵船のオーストラリア航路のパーサーとして勤務の後、富士屋ホテルに婿入りし、半世紀以上、ホテルマンとして生きた祖父は、正統派イングリッシュブレックファストの習慣を死ぬまで崩さなかった。 (第3章 泊まる) 山口由美 『百年の品格 クラシックホテルの歩き方』 読了。富士屋ホテル、日光金谷ホテル、万平ホテル、奈良ホテルが取り上げられている。まさに完璧といっていいほどのプレーンオムレツの均等なイエローの焼き上がりや、美しい切り口を見せるアップルパイ、クラシックかつ正統派な盛り付けのライスカレーと、時代を経た建築の魅力はもちろんのことだが、予想通りおいしそうな料理に目を奪われる。こんなホテルで、ぼうっとしたり、本を読んだり、スケッチをしたりして過ごしたいな、と放っておけばいつまでもぼうっとしていることが出来るわたしは思うのだった。
* 夕食 * ![]() 秋模様。 Mon.5.9.2011
のんきなことに今日になってインターネットで台風のニュースを見て、大きな被害が出ていることを知る。行方不明になっている方たちが、どうかひとりでも多く無事で見つかりますように。 織機は、納屋にも何台か置いてあるが、それらは夏の間しか使わない。気に入った織機は手近に置き、ちょっとでも暇ができたとき、すぐに座れるようにしてある。たとえばお湯を沸かしている間、あるいは構想を練っているとき、ターシャは靴を脱いで機に向かい、踏み木を踏む。夕方の薄明かりの中に、規則正しい踏み木の音に重なって、緯糸を押さえる筬のリズムカルな音が聞こえることがある。 (第5章 糸から布へ) ターシャ・テューダーさんの 『暖炉の火のそばで』 再読。1度やってみたいと思っているのが、糸紡ぎ。木で出来た紡ぎ車の形はびっくりするほど美しいし、糸を引き出していくプロセスはとても魅力的。でもこの糸を布が織れるほどたくさん紡いで、そして糸を1本1本機織り機に掛けて、織って布にして、そしてさらに裁断して、縫いあげて、服にするなんて気が遠くなる。このことを考えると、裂き織りとかパッチワークというものが出来たのもよくわかる。こんなに手間をかけて織った布なんて、大切で捨てられないよ・・・
* 夕食 * ![]() 続・台風通過中。 Sun.4.9.2011
昨日深夜に思い立って、傍らで眠るむーちゃんとたんぽぽを眺めながら、ちくちく針仕事。これは猫用の座布団・・・ではなく、グラタン皿やココット用のマット。冷めにくいよう、そしてテーブルに熱が伝わりにくいよう、薄く綿を入れてみた。去年までは下にはお皿を敷いていたけれど、オーバルのグラタン皿には合うお皿がなくて、ふと思いついたのだった。試してみたところ、なかなか役立ちそうでうれしい。
このドレッシングは、 『ウーロンと仮面舞踏会の夜』 の巻末に作り方が載っていたバターミルクドレッシング。作中では、縮みレタスに盛りつけたビエトラビーツとマスの燻製のサラダに使われている。バターミルクなど手に入れようがないけれど、バターミルクスコーンを作る時と同じ手で、ミルクにレモン果汁を少し入れて代用。オニオンパウダーはみじん切りのオニオン、ガーリックパウダーはすりおろしにんにくで代用。サワークリーム、マヨネーズ、レモン果汁も入るので、酸っぱい味がダメという人にはお勧めできないが、わたしは酸味OK なのでなかなかおいしかった(作中人物のドレイトンみたいに大好物っていうほどでもないけれど)。さて、大量に出来ちゃったこのドレッシング、残りは何に使おうかな。 「料理は全部で六つ。ワイルドライスのスープ、アプリコットのスコーン、フルーツサラダはパフェグラスでお出しするわ。ズッキーニのキッシュをひと切れ、エビのサラダのミニクロワッサン詰めのシャンパングレープ添え」「いまので五品ね」セオドシアは言った。「最後は本日の主役」ヘイリーはにやりと笑った。「オペラ・ケーキよ。バタークリーム三段とガナッシュ一段、合計四段のチョコレートケーキ。仕上げにはコーヒー風味のグレーズを使ったわ」「くらくらしちゃう」セオドシアは言った。 (7章より) そんなわけで話が前後するが、昨夜ローラ・チャイルズ『ウーロンと仮面舞踏会の夜』読了。このシリーズはおいしそうなお茶も料理も出てくるし、巻末にレシピもいくつかついてくるし、アンティークの話も出てくるしという点で素晴らしい一方で、ミステリーとしてはいまひとつ。今作もそんな感じだった。いろいろ強引すぎる展開だし、主人公のセオドシアの無謀かつ無用心な行動を見ていると、この人がなぜみんなから探偵役として頼られるのかよくわからなくなってくる。それに、亡くなった人の対面式(お通夜みたいな感じ)で、遺体から故人のお気に入りだった大切なものを盗む場面があってびっくり。それってどう考えても、主人公としてアウトだし、そもそも人としてアウトだ。それが推理に役立つとしても、そういう問題じゃないよ・・・ 昼間は気温が上がるけど、さすが9月で夕暮れからは涼しくなる。夕食後、熱いほうじ茶を飲んでほっとしつつ、『ウーロンと仮面舞踏会の夜』に出てきた耳慣れない食材について検索。ビエトラ・ビーツ、イエローと白で彩られたアーチェリーの的のようで綺麗だな・・・
* 夕食 * ![]() 台風通過中。 Sat.3.9.2011
台風通過中。ってえええ、まだ日本上空にいるんだ。なんてスローペース。進路からは離れているうちのあたりでも、青空が覗いた後に土砂降り、そしてそのまま天気雨に移行というめまぐるしい天気だ。これ以上被害を与えずに、静かに通りすぎていってくれますように。 午前中に素材の発注が終了してようやくほっと一息。窓越しに空を眺めつつゆっくりと手紙を書いて、そしてお茶の時間。まだ蒸し暑さはあるけれど、9月になったというだけで秋の気分になるのは面白いことだ。なにより、お茶がおいしくなってきたのがうれしい。そして、お茶菓子を焼いたり、ジャムを作ったり、ティーカップやシルバーのスプーンを磨いたり、クロスにもう1度アイロンを掛け直したり、スコーンを温めなおしたり、お茶のためのひとつひとつの準備が楽しい。
ブロッコリはサラダとしてテーブルの中央に置くと洒落た一品になります。アスパラガスと同じようにゆでてください・・・・・・深皿に盛り、油とヴィネガーと塩少々をかけて混ぜあわせます。金蓮花の蕾を飾ります。 (「ブロッコリのサラダ」) 『ジェイン・オースティン料理読本』 再読。オースティン家の料理人だったマーサ・ロイド、そしてフィリップ・リップ・ボウイス夫人(ジェイン・オースティンの母の古くからの友人)のレシピブックに収録された料理を中心に収めてある1冊。カスタードクリームの風味付けにローリエが使われていたり、ローズウォーターやオレンジフラワーウォーターが風味付けに多く使われていること、そして「脂肪の少ない」スイススープの脂肪の多さ(バター110g とライトクリーム 125cc)など、レシピ部分も面白いが、個人的に1番興味深いのは、「四つ折り判のノートブックで、白い子牛革で製本」された、マーサ・ロイドのレシピブックについての記述。料理について記述した部分を写した白黒の写真も添えられている。「書きこみにしても、色あせたものもある一方、インクが濃すぎて真っ黒になり、反対側にまで染みだして判読できない頁もあります」のくだりに共感。つけペンってそういうことあるよね・・・ 昨日の反省からお茶の時間をお昼兼用の2時にしてみたが、夕方になってもあまりお腹が空かない。イギリスの豪華なアフタヌーンティーの写真や映像を眺める度にそのボリュームにびっくりしてしまうが、彼の地の方々はあの何時間後に夕食をお召し上がりになるのだろうか。何時間経ってもお腹が空くように思えないけれど。でも、欧米のひとたちは食べられる量が違うのかもしれない。ヴェネツィアで、枯れ木のように痩せた身体に黒のドレスを纏い、パールを身につけた、コピー&ペーストのように似たおばあさんたちが、ワインのボトルを次々空にし、冗談はよせと言いたくなるほどに大量のスパゲッティを平らげた後で仔牛肉の煮込みかなんかを食べ、そして食後にはクリームで出来たスイスの山々とでも名付けたいようなデザートが運ばれてくるのを見て、どうしようありえないことが真横で進行している・・・とおののいたことを思い出す。
* 夕食 * ![]() 台風接近。 Fri.2.9.2011
台風接近中。その影響で、夏の日差しのようなまばゆい陽光が降り注いだかと思えば、いきなり土砂降りになったり、不思議な天気。そして英語とリトアニア語での発注メールに頭がカオスになったわたしは、気持ちを落ち着けるべくオーブン仕事。昨夜のうちに生地を仕込んで冷蔵庫に入れておいたレッドチェダーチーズクラッカーを焼いて(あまりに冷えすぎて、撲殺できそうなほどかちかちな生地を伸ばすのに四苦八苦)、それから昨日煮たいちじくのジャムを賞味すべく、さっそくスコーンを焼く。GREENS のスコーンミックスは、最初に使ったときにはあまりにも生地がぽろぽろになりすぎてしまって、これはわたしには合わないなーと残りの1箱が置きっぱなしになっていた。そろそろ使わないとなあと今回使ってみたが、やや長めに練ったからか、ちょっと牛乳の量を増やしたからか、なんだか良い感じに仕上がってびっくり。あれ? そしてスコーンには興味がないこのひとは(クロテッドクリームには大いに興味があるけど)、相変わらず白石温麺 LOVE。というわけで昨日撮った写真の続き。
そして人の方もお昼の支度。今日は蒸し暑いので、昨日作って冷やしておいた小茄子の干し海老煮を、海老の旨味が出た煮汁ごとかけて、青紫蘇をのせる。出汁が沁みた小茄子と干し海老の歯ざわり、そして白石温麺のおいしさが組み合わさって満足の味!この一品のためだけに小茄子の干し海老煮をまた作りたい感じ。そして今日こそゆっくり味わって食べるはずが、あまりのおいしさにまたちゅるちゅるとあっというまに頂いてしまったという。
Tutto crolla, ma nulla crolla. "Venus Preserved" 読了。最後の最後で、Shakespeare の作品の中で1、2を争うほど好きな The Tempest の1番好きな一節が出てきて、それはずるいよーと思いながら読了の余韻でただでさえゆらゆらしていた心を揺さぶられる。そして、静かな輝きを放つ女剣士 Jula に比べると、実のところとりたてて惹かれる登場人物でもなかった Picaro に、最終章まで来てあまりの存在感に目が釘付け、わーとなる。繰り返し新たな肉体に宿り、連綿と次の生を生き続ける魂の孤独と重みも加わって、なんとも言えない気持ち。というか Picaro、ここでこんなセリフを言っちゃうか!格好良すぎ! スコーンの威力でお腹にスペースがない夕食は、簡単におつまみ系で。
* 夕食 * ![]() 琥珀と琥珀。 Thu.1.9.2011
昨日お友達から頂いた白石温麺、その名も琥珀!猫にあげるにはもったいない上質なお品だけど、琥珀にというメッセージを頂いたので(TOMOGUI だとも。たしかに!)、ありがたく豆皿におすそわけ。ほら琥珀さん、ありがたいことに君のファンだと言ってくださる方からの贈り物ですよ・・・
そして人の方もお昼の支度。実は白石温麺は こちらのブログ でその名を知り、いつか食べてみたいなーと思っていたのだった。紹介されていた頂き方を参考に、ほぐした鶏ささみ、茹でたつるむらさき、千切りの青紫蘇と刻みあさつきを具として用意、茹でた鶏ささみから取ったスープにお醤油、ナンプラー、塩少々を加えて温めておき、茹でて水で洗った白石温麺に好きなように具をのせて頂いた。あっおいしい!つるつるしたなめらかな舌触り、そして心地良い弾力!感嘆しつつ、するするとお腹におさまるまでがあっという間だった。
"WE ARE THE fallen angels". "Venus Preserved" 、あまりの超展開に頭がまっしろ。どれくらい超展開かというと、ほんとに自分はちゃんと意味を追えてるのか混乱して2度読み返してしまったほどだ。そもそも天使ってなんだったのかわからなくなりそう。そういえば『花と太陽と雨と』で、職業が天使ってひとが(その時点で人じゃない)いたなあ・・・そしてこの本にも現れる、4人の騎士という象徴。
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