![]() ![]() ![]() 有元利夫展。 Sat.17.7.2010
すかっと晴れて青空がまぶしい今日、東京都庭園美術館の有元利夫展へ。朝香宮邸と有元利夫の絵という組み合わせだけで、もうわくわくするが、今日はさらにもう1つお楽しみがある。 後述する理由によってちょっと気が急いていたが、とりあえず深呼吸して心を落ち着け、まずは館内に足を運ぶ。この美術館は、このアール・デコ様式の優雅な建物を外から見るだけではなく、歩き回れるという感覚が何度来てもいい。さて展示はというと、いくつか気づいたことがあった。前回ここに足を運んだのは2007 年のティファニー展だったが、そのときは展示品が照明つきのガラスケースの中にあったので気がつかなかったことだ。今回良かった点は、建物と絵のコラボレーションとでもいうような効果が随所に見られたこと。特に「室内楽」と、全面に浮き彫りがされた壁との調和には、はっとさせられた。良い額は絵の世界を広げたり、深めたりするものだが、壁や部屋との調和には、いっそう劇的な効果があった。一方気になったのは、照明の色。オレンジ色のやや暗めの照明は朝香宮邸の雰囲気にぴったりだが、その光が絵にかかると、有元利夫が空の色に使っている明るい青緑が殺されてしまう。赤系の色が中心になった絵はそれほど気にならなかったが、以前別の美術館のニュートラルな光の下で見たことがあっただけに、空の面積が大きい絵に関しては正直残念な気持ちだった。 今回見入ったのは、陶器の彫像と赤ちゃんを抱く女性を彫った木彫りの作品。いくつかの絵の中の女性が、わたしには陶器の像を描いたかのように見えるので、陶器の彫像は二次元のものが三次元に自然なかたちで立ち上がったかのようで、読んでいた本の世界がふいに立体になったかのような面白い感覚だった。また、この美術展のカタログが箱に入った作りで、箱の方には「花降る日」が配されていたのもうれしかった。それにしても、このカタログを見ても、ポスターを見ても、絵が配されたレターセットを見ても思うことだが、有元利夫の絵は、すっときれいにはまる。語弊を恐れずに言えば、あまりにはまりすぎて、それ以上深く絵を見ずともこぎれいなデザインとしてだけ見ることが可能になってしまう。これは、いろんな媒体に利用されやすく、ひいては多くの人に知られやすいという面では有利な点でもあり、一方絵画としては不利な点でもあるように思う。そうした意味では、藝術大学での卒業制作「私にとってのピエロ・デラ・フランチェスカ」の、ざらざらとひっかかる感じが、改めて新鮮に感じられた。
ところで、この美術展にはリアルナゾトキゲームという面白い仕掛けがあった。指定されている5日間の間だけ、「ナゾトキキット」を購入し、そこにある謎を解くことで、この展覧会では展示されていない絵を見ることが出来るというものだ。これはやるしかないでしょう! はりきってインターネットでキットを予約し、まずはチケット購入前に横のミュージアムショップに足を運ぶ。素敵な文房具の品揃えにさっそくよろめいて買ってしまったりしつつ、名前を告げてナゾトキキットを購入。謎解きはどれくらいかかるかな。20分?長くて30分くらいかな?とのんきに構え、午後1時半に到着したわたしに、店員さんは「謎解きは、3時間ほどかかります。17時までにここを出ませんと時間的に間に合わなくなる可能性がありますので、ご注意ください。」とにこやかに告げてくれた。 あははははは。 ・・・えらいこっちゃ! 瞬時に、5時を過ぎた庭園を泣きそうになりながらさまよって謎の答えを探している自分の姿が脳裏に描かれたが、と、とりあえず美術展を見よう。ということで、午後をだいぶ回ってからのスタートとなる。まずは、キットの中の謎を庭園美術館の庭園を歩き回って解き、次に向かうべき場所を探すのが第一段階。で、さっそく一問目からつまづく。えーとこれが回答?でもこれ何?とある彫像の前で途方に暮れていると、お母さんと一緒に謎解きにチャレンジしている小さな女の子の「あった!」という声が。その親子連れが立ち去った後でそうっと覗くと、あッこれか!と答え発見!ありがとう女の子! その後はとんとん拍子で謎解きは進み、日本庭園で少し悩んだがどうにか自力で回答発見。あーよかった。 さっそく次の場所へ移動!電車の中にはナゾトキキットを持った人たちがいて、あの答えで合ってるんだとほっとする。で、車内で次の段階の質問の回答を考えるが、最後のなぞなぞが全くわからないこれじゃあ着いても絵が見られない。困った・・・と懊悩していると、前の座席に座っていた人たちが、「わかった、これ、○○だよ!」と回答を叫んでくれた。うわーありがとう、見知らぬ女性たちよ! さあ、目的の駅に到着!ここからは実際に歩いて指定された場所を観察し、回答を埋めていく。あたりにはナゾトキキットを持った男性が数人いらっしゃったが、どの方も足が早く、みるみる引き離されてひとりに。謎解き地図を見ながら歩いてきたものの、この曲がり角でほんとに合ってる・・・?と不安になった瞬間、紺の作務衣を来たおじいさんが缶ビール(大)を飲みつつふらふらとやってきて、「ここだよ〜」とにこやかにわたしに言って去っていった。えー?!ナゾトキキットを持ってさえいないこの方は、神さま?仙人?スタッフの人?とりあえずありがとうございます! そのまま順調に謎解きは進んだもの、絵がある「秘密の場所」の前で予想外のひとひねりがあって頭を悩ませる。が、どうにか解けて、無事絵を見ることが出来た。長い道程を経てようやく辿り着いた暗いその場所で、スポットライトを浴びて浮かび上がるその絵に、しばしぼうっと見入ったのだった。 かかった時間は、その場所から駅まで戻る時間も含めて3時間ほどだった。ああたのしかった・・・!この後は、7月24日(土)、25日(日)も開催される模様。参加される方には、歩きやすい靴を履かれることを強力にお勧めします。わたし、木底のサンダルで行ってしまいました・・・そしてトータル3時間もお忘れなく。これはみんな予想外だったみたいで、ミュージアムショップでナゾトキキットを受け取るところを目撃した計10人ほどの人たちが全員「さんじかーーん?!」と叫んでました。
* 夕食 * ![]() ![]() ![]() |