April 2009

   




      瞬間風速。

     Sat.25.04.2009 





   このところ、セレナイトに惹かれる。

   あまりに早すぎて、いっそ止まっているようにさえ見えるような日々。

   初めてサンタフェに行ったときのことを思い出したりもするけれど、それともまたぜんぜん違う。こういう面白い感じは、人生で初めてかも。




   猫たちがすごい事態を引き起こす前に
   早く安定したかたちになってくれることを願ってやまない
   うちの太陽系。





      ささやき。

     Tue.14.04.2009 







   そっと、耳を傾けているような。







      春の庭。

     Mon.13.04.2009 





   クレマチス "月宮殿"。
   どこか漂う妖しい魅力を愛している。

   庭の花たちが次々に花咲いている。早春の頃は、1つ1つのつぼみのふくらみや新芽のわずかな動きに見入っていたのに、今はあまりにも植物たちの成長が早くて、目が追いつかない。

   2輪目に咲いたチューリップは、やっぱりシャーリーだった。アンジェリケもつぼみが持ち上がったのは同じ頃だったけれど、やっぱり花がくしゅくしゅとして複雑な分、咲くまでは準備に時間が掛かるみたいだ。花を終えた水仙のそばには、淡い青の星のかたちのアイフェイオンたちが輝くように風に揺れ、咲き終わりのヒヤシンスに触れると、その横で Scilla non-scripta が一輪咲き始めていることに気づく。それは、姿を変えて続いていく命の姿そのものだ。



   いにしえのティー・ローズ。
   華のある、果物の瑞々しさを感じる香り。


   花弁の重なりが多い種類ほど、完全に開くまでに時間を必要とするのは、もちろん薔薇も同じ。これはオールド・ローズの Devoniensis デヴォニエンシス。冬の間にもうつぼみをつけていたLichfield Angel リッチフィールド・エンジェル、そして Francois Dubreuil フランシス デュブリュイに続いて、この春3輪目の薔薇。こんなに暖かい日が続くなら、すっかり開くまであと2日ほどだろうか。

   もうすぐ、1番大好きな薔薇の季節、5月がやってくる。もちろん花屋さんに並ぶ色とりどりの薔薇もとても素敵。でもやっぱり、庭の薔薇を部屋いっぱいに生けられる時が待ち遠しい。画家の豊永侑希さんも書いていらっしゃったように、自分で育てた薔薇を眺めながら紅茶を飲むことほど贅沢なことはないと思う。






      首輪の秘密。

     Sun.12.04.2009 





   赤い首輪。


   うちの猫たちの中では、おとうさん猫の牡丹だけが首輪をしている。

   結石で通院していた長い期間、万が一の飛び出しなどの事故を防ぐために、牡丹には首輪をつけ、もしものときのために名前と連絡先の電話番号を刻んだ金色のネームプレートもつけ、リードをつないで、キャリーバッグに入れては病院に運んでいたのだった。やがて大きな手術が幸いにも無事終わり、元気になった牡丹の姿に喜びながら、これまでさぞ邪魔だったろうとねぎらいながら首輪を外してあげた・・・ら。

   へた、という感じで座り込んでしまい、ぼうぜんとわたしを見上げる牡丹。

   え?もしかして自分だけつけているこの首輪がすごい自慢だった・・・の?

   おそるおそる首輪を元通りつけてあげたら、金色の鈴を軽やかにりんりんと鳴らしながら、ぴんと立てた尻尾もりりしく、牡丹は意気揚々と歩き去っていったのだった。






      春の大掃除。

     Sat.11.04.2009 





   Shirley シャーリー開花。
   クリーム色に一刷毛掃いたような淡い紅。


   春の大掃除期間中。

   午前中に1時間とか、夕方に2時間とか、時間を見つけての大掃除だけれど、ダンボール4つ分の本と2袋分の洋服が旅立って、少しずつ身軽になってきている。ある時期に、たくさんの本を処分して必要な本だけになった、と思った本棚の一棚も、時を改めてもう1度見直してみると、その頃「必要だった本」が「もう手放していい本」になっていたりして、普段の軸線とは違う切り口で自分の変化を知る。




   今年最初に咲いてくれたチューリップ。







      ごはん。

     Fri.10.04.2009 





   秋の黄と春の黄緑。
   ふしぎな出会いもの。

   夕食の材料を買いに行ったら、食用菊の鮮やかな黄色の目を惹かれる。季節のものじゃないけれど、なんだかとても食べたくなって、籠に。スナップえんどうと酢のものにしたら、その色合いがなにかに似ているような気がした。あ、たんぽぽ。




   なので、器も加護 園さんのたんぽぽの種のグラスに。


   あとは、桜のピンクが欲しかったので、茹で蓮根の明太子和えとか・・・



   茹でたれんこんを明太子、マヨネーズで和えて、七味と万能葱を振っただけ。

   ごま油少しでかりかりにしたじゃこに、みょうが、万能葱を混ぜた一品、甘海老のお刺身に青紫蘇入りの笹かま、甘海老の頭のお味噌汁などで一献、な春の夜。




   少し前にお蕎麦屋さんで出逢って気に入っている料理。






      春の白。

     Thu.9.04.2009 





   クレヨンやパステルのような、白。

   差し込む日差しのあまりの爛漫さにそわそわ。なんだかじっとしていられず、まるで南国の浜辺並みにそこら中で猫たちが気ままに寝転がっているのを横目に外に出て、自転車で一走りしてオフホワイトのデージーの花束を買ってくる。



   春だなあ。





   精緻なエングレービング。

   ガーベラを生けたのは、アンティークのガラスピッチャー。イギリス製。羊歯植物や蔓植物の美しいエングレービングに目を奪われる。わたしの好きな羊歯のエングレービングが入ったガラス製品が同時代のアンティークの中から多く見つかるのを不思議に思っていたが、その当時オーストラリアがイギリスの植民地になったことをきっかけに、当時の人々の目にエキゾチックで魅力的と映った羊歯モチーフが流行したのだとアンティークショップの方に教えて頂いたことを思い出す。



   





      力技。

     Wed.8.04.2009 






   新規導入のおもちゃ、「ねずねずさん4号」(勝手に命名)を取り出し、みんなで遊ぼうとしたら




   動きを元から断とうと、おもむろに紐を喰い切ろうとするむーちゃん。戦略としては正しいけど、それはダメ。というかそもそも君は、この遊びの趣旨を理解していない。






      ディスコミュニケーション。

     Tue.7.04.2009 





   陽だまりで座布団とクッションを干してはみたものの
   いつものごとく猫エデンになってしまっただけだった。


   朝ごはんのじゃこおろしに手を出そうとしたむーちゃんに、いつものごとく「こらー!」と叫ぼうと思ったが、いやきっと今日こそむーちゃんだって話せばわかってくれるはずだと思い直し、「むーちゃん、それはやってもいいことなの?」と目を見て静かに話しかけたら、珍しくじっと考え込み、そうしてその横にあった焼き海苔をくわえて去っていった。

   ・・・いや、わたしが言いたかったのはそういうことじゃないんだよね、うん。



   「だって、むー兄ちゃんだもん。」







      さくらが さいた。

     Mon.6.04.2009 







   縁側で咲いた「旭山」。
   30cm ほどのちいさな、けれど立派な、桜。


   桜のほろほろとしたピンク色にうっとり。

   自転車で桜並木を走るのが、この季節の毎年の楽しみ。掌にひんやりとする、天から舞い散る花びらをつかまえようと、子供たちが笑いながら走り回っている。出店が出るお祭りの日は楽しいけれど、あまりに人がおおくて桜を見るどころではなくて、お祭りが終わった後の静かな日に、ごつごつした幹に触れながらゆっくりと眺めるのが好きだ。空の色を宿したように、ほんの少し蒼を孕んだこの淡い紅。遠くまで続く桜の色が、まるで天に続く道のようだった。




   音もなく降る雨のように、しずかに花びらが降り注ぐ。




   彼方まで続くさくらの道。







      紅葉。

     Sun.5.04.2009 





   通りすがりのたんぽぽかあさんに、ちゃいちゃい中。

   牡丹とうさんにたんぽぽかあさん、その間に生まれた小さいおねえさんのうららと、仔熊と見まごうばかりの大きなおとうとののどか。そんな一家のもとに6年前の夏の終わりに迷いこんできた迷子の仔猫が紅葉だった。

   とても小さい頃から育ててきたためわたしへの信頼度1000%、かかさんはどんなときでも自分をいじめたりするはずがないとばかりに大荷物を運んでいるわたしの前を平気で横切ったりする牡丹(10年も一緒にいるのに、わたしの運動神経の悪さを学習していないのか!)とは対極に、のらのらちゃん一家ののら王子として育ったらしい紅葉は、わたしにだけは顔をすりすりすりよせて甘えるものの、ちょっと物音がしたり、わたしが立ち上がったりすると脱兎のごとくいなくなる。それでもこの3月に、初めてわたしの膝の上に乗ってきて甘えてくれたり、日々少しずつ変化してきてはいるのだけれど。

   そんな紅葉の唯一の芸は「ごあいさつ」。一体全体どうしてなのか、正しい猫はごあいさつをするものだという信念がこの子にはあり、逃走体制に入った時ですらも、「もみじ、ごあいさつは?」と訊くと、ああどうしよう、ああどうしようと逡巡した挙句、きちんと座って目をつぶって小さな小さな声で「きゃ。」と鳴くのだった。

   そういえば、おしゃべりな一家の中で、この子だけがとても無口で、とてもうれしいときでも、しっぽは全力でぴんと立てて喜びにふるふるしつつも、「きゃ。」と短く鳴く。長く鳴くのを聞いた(それも小さな声で)のは初めて動物病院に連れて行ったときぐらいだった。これは血筋らしく、ご近所で見かける紅葉の兄弟姉妹と思われる猫たちも、皆とても用心深く、ほとんど鳴かず、そしてどの子も毛がふかふかで、そうして足が短いのだった。




   のどかが弟を毛づくろい。







      「小さな百貨店」。

     Sat.4.04.2009 





   窓辺に黒猫。

   Café SAYA さんのイベント、「小さな百貨店」へ。

   出窓の白いカフェカーテンの下のプリズム。大きなフラスコの中の人工結晶。小さな鉱石標本。光に透けるインシュレーターたち。こちらにお伺いすると、いつも自分が物語の中の登場人物になったような気持ちになる。許可を頂いて、お店の中で数枚シャッターを切った。シャッター音が思いのほか硬質に響いて、そこに息づく品々の目を覚ましてしまいそうで、ちょっと緊張する。



   1日中眺めていられそう。




   小さな本が小さな本立てに並んでいる・・・
   片袖の書斎机は、どの引き出しもちゃんと開く。


   お店に入ったときから、1番奥の小さな家具たちに視線が向かう。今さっき小さな人がお茶でも淹れに立ち去ったばかりのような、空気。これはドール用の家具。実は子供の頃から、動物のぬいぐるみは山ほど持っていたけれど、なんだかこわくて人形というものを持ったことがない。それが少し残念に思えるほど、印象的な世界だった。



   窓の外に舞い散る桜を眺めながら、桜色の曹達水を飲む。



   「豆本サンド」!レンズ豆のスープつき。

   食事それ自体もこの世界を構築する大切な要素。小さなケーキが並んだデザートプレートにも心惹かれつつも、豆本に見立てた小さなサンドウィッチとスープを頂く。すっかりとりこになってしまったインシュレーターを、今日はどれにするか選んだり、小さな小さな鉱物標本に眺め入ったり。でも今回お迎えした1番の大物は、Kent Studio さん謹製の道具箱。お店に入るなり吸い寄せられて、食事のオーダーをさせていただく前に手にとって眺め入ってしまった。夜遅く、パズルのように組み替えながら道具類を入れていったら、ぴったりおさまってすっきり。箱に必要なものが過不足なくきちんとおさまるのは、とても気持ちがいい。



   道具箱には




   道具を入れて。製作のための品々。



   取り外しの出来る上の段には仕切りが。





      おおさんしょううおの日。

     Fri.3.04.2009 





   じいいいい。
   「抱っこして」を全力でアピール中。


   友人に教えてもらって購入した5月号のNewton を熟読中。アオリイカの標本やX線で捉えた銀河写真など興味深いものは数あれど、もちろんお目当てはおおさんしょううお特集。平たいあたま!愛らしい小さい目!ボディの曲線!ウーパールーパーみたいな幼生!ああ、1度でいいから抱きしめたい・・・たぶん思いっきり噛まれて血塗れになっちゃうけど。

   そんなわけで、おおさんしょううお、猫、リトアニア語、お茶、おおさんしょううお。という感じの、実に有意義な1日だった。




   窓際のベストポジションを狙っていたちーちゃんことうらら。
   リラックスポーズで陣取ったたんぽぽは全くどく気配がなく、敗北。







      猫ハーブティー。

     Thu.2.04.2009 





   傍を離れたくありません。

   花粉症のわたしが今年はかなり楽に過ごすことが出来たのは、昨年お友達に教えてもらったマリエン薬局のハーブティーとホメオパシーのおかげ。去年はあまり効いた実感のなかったホメオパシーなのに、今年は飲むとすぐに効いて、その劇的な効果にびっくり。こんなことってあるんだなあ。

   あまりの効きように感激して、また別のハーブティーをお願いしてみた。その荷がドイツから届いたのだけれど、エアパッキンの袋を開封するなり異変が。なにがというと、スイッチを押したかのように殺到する猫の群れ。え?え?え?ためらいのないむーちゃんことのどかがテーブルから包みを落とし、その後は交互にくんくん、すりすり、ウィーラブハーブティー状態。包みを見ると、リラックスブレンドと書いてある。どうしよう、うちの猫たちはそんなにもリラックスが必要な状態にあるのだろうか・・・と思っていたら、ひととおりハーブティーを愛でた後は、興奮のあまりしっぽをたぬき状態にしての必死の追いかけっこと、目にも留まらぬ猫パンチとキックの応酬が始まった。・・・えーと、リラックスブレンドだよね?配合を見ても、バレリアンルート、ホーソンフラワー、メリッサなどなど10種類を越えるハーブがブレンドされているけれど、特に猫の琴線に触れそうなものは見当たらない。不思議だ・・・このお茶を飲んでわたしも大暴れ状態になったらどうしようかとちょっとどきどきしつつある朝。




   うっとり。



   くんくんくんくん!



   すりー すりー
   あちょっと、むーちゃん!よだれよだれ!







      開花。

     Wed.1.04.2009 





   水仙 Obdam ・・・のはず。
   八重の花びらがまだ開ききらず、くしゅくしゅでかわいい。


   八重の水仙、Obdam が開き始めた。ぽってりとした蕾が、ゆっくりゆっくりと頭をもたげ、ほろほろとほどけるように花びらが現れてくる様子から目が離せない。咲き始めだからか、今は目に鮮やかな檸檬色。将来的には純白になる予定。

   まだまだ肌寒いけれど、今年初めての雲雀の歌を聴いたり、薔薇たちの柔らかな新芽を眺めたり、次々に開いていく花たちに目をみはったりする中で季節の息吹と共鳴したのか、このところ自分の中で生命力が高まるのを感じている。でその結果、角を曲がり損ねて柱にぶつかったり、階段でつまづいたり、なにもないところで転んだり、毎日着々と青あざと擦り傷が増えていっている。なんというか、機動力に操縦がついていっていない感じ?これを果たして季節の問題として片付けていいのか、おおいに疑問だけれど。そのうち勢い良く卵を割ろうとして景気良く粉砕してしまったり、方向転換した拍子に、ぼうっとしたうちの猫たちをまとめてなぎたおしたりしはしないかととても心配だ。

   さて、今から趣味のリトアニア語単語入力再開。うんうんうなり、頭を抱えてテキストや文法書を捲る姿はどう見ても楽しそうには見えず、けれどそれでも楽しいのが不思議だ。しかし、なぜこんなに苦しみつつ熱中しているのか自分でも謎であるせいか、「ご趣味は」と聴かれると「リトアニア語・・・です?」と語尾が疑問形になってしまうのだった。

   夜、雷雨。雷が落ちるたびに、最年少猫の紅葉がすごい音に硬直しながら「これだから人間なんて・・・!人間なんて・・・!」と非難の目でこちらを見る。わたしのせいじゃないですよ?!




   最初の一輪。






   

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